この記事では、中国の伝統芸能である「変面」の仕組みについて解説します。変面を見たことはあっても、仕組みや使い方について知らないという人もいることでしょう。一瞬にしてお面が変わる見事な技で、仕組みやからくりが知りたくなりませんか?そこで今回は、一部で「国家機密」とも噂されている変面の仕組みについて解説していきます。意外と知られていない変面の歴史も紐解いていきますので、興味を持った方はぜひ最後までお読みください!
中国の伝統芸能「変面」とは?
中国の伝統芸能「変面」とは、四川省の伝統劇「川劇(せんげき)」内の一幕で披露された技巧と言われています。役者が手を顔に当てた途端、その人が装着している仮面が一瞬で変わるのです!演劇の内容に合わせ、喜怒哀楽を表現するそれぞれの仮面に変化させる門外不出の秘儀とされ、一子相伝のみ伝承を許された技法です。一瞬でお面が変化するのは、マジックとしか言いようがない見事な展開。一体どんな仕組みになっているのでしょうか?
https://twitter.com/Clanco2023/status/1960652249467904130
変面の仕組みを徹底調査してみた
それでは、変面の仕組みについて調べてみましょう。変面は一般的に、マスクが3枚から5枚重ねられた状態で、顔に張り付いています。
https://twitter.com/mendosukida/status/1964683346728165766
それらを、特定の手順で一枚ずつ剥がしていく方法が主流だそう。この手法は「剥面(はくめん)」と呼ばれ、熟練の技が必要なものです。このマスクは特殊な絹や布で作られ、独特の接着剤で固定されています。接着剤は、湿度や温度に影響されにくいものだそうです。それを、目にもとまらぬ速さで剥がしていくことによって成立する技なのですね。
変面は「仕組み」よりも技術がスゴい?
上記のように、変面の仕組みは意外にもシンプルなものでした。特殊な材料が使われていることも、変面の技が成功するための秘訣であることは間違いないでしょう。しかし、仕組み自体はマスクが接着剤でくっついているだけの簡単なもの。そのため「変面のすごさ」というのは仕組みではなく、シンプルなからくりを魔法のように魅せる技量にあるのではないでしょうか。素早い動きに、お面が変わった瞬間を客に感じさせない細かな技術は、何年もの訓練が必要なものなのでしょう。
謎が残る変面の仕組み
変面は、1360年代には既に技巧が記述されていることから、700年近い歴史を持つ技術であることが分かります。接着剤でくっついているマスクを剥がしていくという、シンプルなやり方のみ公開されていました。しかし、具体的にどのような仕組みでお面を剥がしているのかは「秘伝」とされています。しかし、現代では日本でもパフォーマンスとして変面が使用されている動画がアップされています。
マントで一瞬顔が隠れただけで、見事にお面が変わっていますね!
変面は国家機密って本当?
700年近い歴史を誇る、変面。実は政務院総理・国務院総理を務めた周恩来という人物の意によって、変面の仕組みは中国の国家機密とされている噂もあるんです。また変面の技術は一子相伝であり、その仕組みについては門外不出。変面師に聞いても、教えてもらうことはできないそうですよ。伝統技術を守るため、中国第1級国家秘密であるともいわれています。
参考:青春クローズアップ
国家秘密なのに日本でも行われているのはなぜ?
変面は国家秘密であるといわれる一方、現代では日本でも動画がアップされているほど知名度の高い伝統芸能。本当に「国家機密」なのかは疑問が残りますね。しかし実情としては、本家の変面や資料などからその仕組みが暴かれてしまったことが理由だそうです。現代は伝承者でなくても変面ができるようになり、また技術の改良も進んでいるため、もはや国家秘密とは言えなくなってきているのですね。
本当の伝統技術は本当に国家秘密である可能性
国家秘密といわれている変面の仕組みですが、現代の変面は現代に開発された技術に沿って行われています。そのため、現代の方法が生まれる前の仕組みに関しては世に出ていないのです。その本当の仕組みについて知っているのは、中国の伝承者のみでしょう。現代開発されている変面が、必ずしも当時と同じ仕組みであるとは限りません。現代世に出ている変面は、オリジナルの変面の資料を見て、推測で研究・想像し、新たに作り出した変面なのですね。
変面はどこで見れる?
変面のショーを見たい場合には「変面ショー」が開催されているイベントを狙ってみてください。たとえば、これまでに横浜大世界や長崎孔子廟にて、変面ショーが行われてきました。テレビでも放送されており、日本で楽しめる中国の伝統芸能として注目されているようです。
出典:NCC長崎文化放送
また、浅草の「浅草東洋館」や中華料理屋で変面ショーを開催することもあるそうですよ。
変面の歴史をわかりやすく
実は、本場の変面を伝承している人はおらず、既に廃れてしまったと言われています。その理由は”一子相伝”など厳しく保護しすぎたことや、収益性が悪く挑戦したい若者がいなかったことなどが挙げられるそうです。そのため、変面の仕組みとして分かっているのは現在のからくりのみ。現代版の変面が生まれたのは、今から32年前の1993年でした。中国の劇団俳優・王道正さんが開発しました。その技術が認められ、王さんは「初代変面王」と呼ばれるようになったそうです。
変面誕生の瞬間
変面が誕生したのは、明の時代末期から清の時代初期にかけての四川省です。中国各地から四川省へ移民が流れ込み、各地の文化や演劇スタイルが一挙に演じられるようになりました。そのように文化が融合する中で、演技者同士が創意工夫を凝らし、観客に受け入れられるようになったのが、変面だそうです。中国の伝統芸能において最も貴重であると認知され、国宝とも呼ばれています。
参考:中国変面商店
時代とともに進化してきた変面
王道正さんが生み出した現代の変面は、時代とともに改良されていきました。そして2004年、国家第ニ級俳優の王劉世虎さんが技術をアップデートし「新変面王」と呼ばれるようになったのです。これを機に、中国には変面師や変面衣装工場が増え始めたといいます。そして、同じく劇団俳優だった彭登怀さんが枚数を増やしたり、新たな技術を開発したりしました。過去を振り返ると、1年くらいのペースで技術や仕組みが進化していることが分かります。
現代の変面はクオリティーも良い
現代使われている変面は、昔のものと比べて耐久性に優れ、高発色で綺麗に見えるのが特徴です。お面の技術自体もアップデートされていますし、お面を作る際の素材やプリンターなども進化しているため、年々良い変面を作ることができているのですね。今では、好きな柄をプリントし変面を作るというサービスを提供している企業もありますよ。
参考:中国変面商店
最後に
今回は、中国の伝統芸能「変面」の仕組みやからくり、国家機密と言われている真相について解説しました。変面が生まれた約数千万年前は、確かに国家機密だったようです。しかし現代の変面は、本家の変面を推測して新たに作り出したものだとわかりましたね。現代の変面でも十分、見応え十分のパフォーマンスとして人気ので、見たことがない方はぜひ観劇してみてはいかがでしょうか。